2015/05/27 更新

マーボー豆腐

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マーボー豆腐には思い出がある。

料亭で働いていた頃の話だ。

料理人はお客様への料理をつくるが、もう一つ料理人の食べる「まかない」もつくる。

料理人が日替わり当番で一人でつくる。

ちなみに、私の得意まかないは「温麺」であった。

18人いた料理人の中でも、ナンバーワンは四国出身の先輩がつくる「マーボー豆腐」である。

生姜、葱、を丁寧に刻み、和風の味噌仕立てで仕上げる。

ご実家が中華料理店をされていて、息子さん二人が和食、洋食の料理人の修行をして、将来、和洋中のある料理店を開店されるとの夢があった。

そのご実家直伝の「マーボー豆腐」と和風の味がプラスされていたわけだ。

「末岡!お前今日のまかないは何がいいかね?」

毎度「マーボー」を注文する、仕事の時とは違い優しく毎回要望を聞き入れてくれた。

そんな先輩が不慮の事故で亡くなったと友人からの噂で知った。

料理の世界から介護・福祉の世界へ転職する際も、荷造りダンボールへメッセージを書いてくれていた

自分がオヤジになった現在でもあたたかく思う。

誕生日にはサプライズでカラオケを熱唱してくれたこともあった。

仕事には厳しく、叱られ注意していただいた。

そんな優しくあたたかい人のつくるマーボーにはもうお目にかかれない。

だから、たまに自分でもマーボーをつくる機会がある。

あの味を思い出し、丁寧さを心がけ、優しい和風味に仕上げる。

料理にはその人の思いが込められるということを教わった。

中華街では味わえない「和中マーボー」是非という方はおつくりしますよ 笑